
10月20日は「世界骨粗鬆症デー」です。血圧や体重は測っていても、「骨の状態は調べたことがない」という方は少なくないのではないでしょうか。骨粗鬆症は、骨の強さが低下して骨折しやすくなる病気です。骨が弱くなる途中では自覚症状が乏しく、転倒や軽い動作による骨折をきっかけに見つかることがあります。
いつまでも自分で立ち、歩き、買い物や外出を楽しむためには、筋肉とともに骨を守ることが大切です。今回は、運動の種類を増やす前に確認したい「骨折リスク」と、食事・検査・治療の考え方をご紹介します。
骨は、痛みが出る前から変化しています
骨は硬く動かない組織のように見えますが、古い骨を壊し、新しい骨をつくる働きを繰り返しています。このバランスが崩れると、骨の量が減ったり内部の構造が弱くなったりします。骨の強さは骨密度だけで決まるものではなく、骨の質も関係します。
骨粗鬆症そのものでは、痛みがないことも多くあります。「腰が痛くない」「毎日歩けている」だけでは、骨の状態が良好とは判断できません。また、転ばなければ骨折しないとも限らず、骨がもろくなっていると、荷物を持つなど比較的小さな負荷でも背骨の骨折が起こる場合があります。
骨密度は「量」、骨質は「構造や材質」の指標です
骨密度は、骨に含まれるカルシウムなどのミネラルの量を表す指標です。一方、骨質には、骨の内部の細かな構造、コラーゲンなどの材質、骨の入れ替わりや微細な傷の蓄積などが関係します。建物に例えるなら、材料の量だけでなく、組み方や材料の状態も強さを左右するということです。骨質はコラーゲンの量だけを指す言葉ではありません。
DXAで測るのは主に骨密度であり、骨質のすべてが分かるわけではありません。そのため、骨密度が比較的保たれていても、骨折歴や持病を含めて評価します。両者の対策には共通点があり、「この食品は骨密度だけ、この運動は骨質だけ」と明確に分けられるものではありません。
骨密度を保つ・増やすための工夫
カルシウムとビタミンDの不足を避け、十分な食事量とたんぱく質を確保することが基本です。歩行や筋力トレーニングなど、体に合った負荷を続けることも骨量の維持に役立ちます。ただし、食品や運動だけで誰もが骨密度を大きく増やせるわけではありません。骨折リスクが高い場合は、骨の減少を抑えたり形成を促したりする薬による治療も組み合わせます。
骨質は「増やす」より、劣化を防ぐ視点で
禁煙、過度の飲酒を避けること、栄養不足を防ぐことなど、骨全体の健康を支える習慣を整えます。糖尿病などの持病や薬の影響も含めて評価し、主治医と管理することが大切です。ただし、これらの工夫によって骨質がどれだけ改善したかを、通常の骨密度検査だけで確かめることはできません。特定のサプリメントを飲めば骨質が回復する、と考えず、骨密度・骨折歴・生活状況を合わせて対策しましょう。
閉経後の女性だけの病気ではありません
女性では、閉経に伴うエストロゲンの低下によって骨が減りやすくなります。更年期の相談では、ほてりや睡眠の悩みに加えて、骨の健康も一緒に振り返ることをご提案します。更年期症状が軽いことと、骨密度が保たれていることは同じではありません。
一方、男性にも骨粗鬆症は起こります。年齢、やせ、過去の骨折、家族の骨折歴、喫煙、過度の飲酒なども、評価の際に確認する情報です。「男性だから」「まだ働いているから」と、骨折リスクを考える機会を逃さないようにしましょう。
病気や薬の影響で骨が弱くなる場合もあります。例えば、ステロイド薬を長期間使っている方や、ホルモンの異常などがある方は、主治医に骨の評価が必要かをご相談ください。処方されている薬を自己判断で中止するのではなく、元の病気の治療と骨の対策を両立することが大切です。
身長の低下や背中の変化は、相談のきっかけに
以前より身長が低くなった、背中が丸くなってきた、軽く転んだだけで骨折した、といった変化は、医療機関で確認したいサインです。身長の低下には姿勢など複数の原因がありますが、背骨の骨折が隠れている可能性もあります。見た目だけで年齢のせいと決めつけないことが大切です。
急に強い背中・腰の痛みが出た場合や、転倒後に脚の付け根が痛くて立てない場合は、運動で様子を見るのではなく、速やかに医療機関へご相談ください。脚のしびれや力の入りにくさなどを伴うときも、早めの評価が必要です。
骨密度検査は「数値だけ」を見るものではありません
診察では、骨折歴、持病、服薬、食事、生活状況などを確認し、必要に応じて骨密度検査や画像検査、血液検査を行います。代表的な骨密度検査に、少量のX線を使うDXA(デキサ)法があります。腰の骨や脚の付け根などを測定し、診断や経過の評価に役立てます。
骨の検査には、かかとを超音波で測るものなど複数の方法があります。測定する場所や方法が違えば、数値の意味も同じではありません。検診で「低い」と言われた場合は、その結果を持参して詳しい評価につなげましょう。逆に、一度の結果だけで今後も安心と決めることも避けたいところです。
治療の必要性は、骨密度に加えて、すでに骨折していないか、今後どれくらい骨折しやすいかを合わせて判断します。自治体の検診も入口になりますが、対象年齢や実施内容は地域によって異なります。症状や骨折歴がある方は、次の検診を待たずに診療としてご相談ください。
食事は、カルシウムだけに偏らないこと
骨の材料となるカルシウムを意識することは大切です。牛乳・ヨーグルトなどの乳製品、小魚、豆腐など、食べられる食品を組み合わせましょう。乳製品が苦手な場合も、一つの食品を無理に食べ続ける必要はありません。普段の献立の中で、何から補えるかを考えてみてください。
カルシウムの利用に関わるビタミンDや、筋肉と体を支えるたんぱく質も必要です。魚、卵、肉、大豆製品などを取り入れ、主食・主菜・副菜がそろう食事を基本にします。体重を減らそうと食事を極端に減らすと、骨と筋肉に必要な栄養まで不足するおそれがあります。
サプリメントは多く飲むほどよいわけではありません。腎臓の病気がある方や、すでにビタミンDなどの薬を使っている方では、摂取量や飲み合わせへの配慮が必要です。食事・市販品・処方薬をまとめて医師や薬剤師にお伝えください。
運動は「骨への刺激」と「転倒予防」を組み合わせる
歩行など体重のかかる活動や筋力トレーニングは、骨の健康を支える方法です。さらに、バランスを保つ練習や下肢の筋力づくりは、転倒を防ぐうえでも役立ちます。運動は骨密度の数字だけのためではなく、安全に動ける体を保つために続けたい習慣です。
ただし、骨粗鬆症や背骨の骨折がある方に、跳ぶ運動、重い物を持つ運動、強く背中を丸める動作を一律に勧めることはできません。痛みや転倒歴、骨折の状態に合わせ、医師や理学療法士と内容を調整しましょう。新しい痛みが出たときは、回数を増やさず中止してご相談ください。
治療の目的は、次の骨折を防ぐこと
骨折リスクが高い場合には、食事や運動に加えて薬による治療を検討します。骨が壊される働きを抑える薬や、骨をつくる働きを促す薬などがあり、骨折歴、腎機能、ほかの病気、通院のしやすさなどを踏まえて選びます。生活改善を頑張っていることと、薬が必要ないことは同じではありません。
治療は「痛くなったら使う」というものではありません。効果や副作用を確認しながら続け、変更や中止も医師と相談して進めます。薬によっては中断後の対策が必要なため、注射の予約を飛ばしたり、自己判断で休薬したりせず、困ったことを早めにお伝えください。
骨とともに筋肉を守る。熟年期のサポート
骨折を防ぐには、体を支え、とっさの一歩を踏み出すための筋肉も大切です。筋肉量や筋力などが低下するサルコペニアへの対策として、十分な栄養と無理のない筋力トレーニングを基本に、熟年期から筋肉を維持していきましょう。
当グループでは、ホルモン補充療法外来でTRTジェル(テストステロン補充療法)を中心とした治療をご提案し、運動・栄養の見直しと合わせて、熟年期の筋肉維持やサルコペニア予防を目指す取り組みをサポートします。男性のテストステロン低下に伴う症状と血液検査の結果を確認し、適応を判断します。
テストステロンが不足した男性では補充による筋肉量の改善が期待できますが、すべての方の筋力・歩行機能の改善や、サルコペニア・骨折の予防が保証されるわけではありません。骨粗鬆症治療の代わりにはせず、治療中は血液検査などで効果と安全性を確認します。妊娠を希望するパートナーがいる方は、精子の産生への影響について必ずご相談ください。ジェルは塗布部位から他の方に付着しないよう、手洗いや接触への注意も必要です。
まとめ:骨折する前に、骨の健康を相談しましょう
骨粗鬆症は、自覚症状だけでは気づきにくい病気です。過去の身長や骨折歴を振り返り、食事と活動を整え、必要な方は検査・治療につなげることが大切です。「まだ痛くない今」を、これからも歩いて暮らすための確認の機会にしてみませんか。
みらいメディカルクリニック赤羽では、整形外科・リハビリテーション科の診療を行っています。背中や腰の変化、骨折後の動きにくさなどをご相談ください。検査の実施内容や受診方法は事前にご確認いただき、過去の健診結果、お薬手帳、他院での検査結果があればご持参ください。最新の診療案内はグループ公式ホームページの赤羽院ページをご確認ください。
