「疲れが抜けない」と感じたら。男性更年期と、お酒との付き合い方

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「疲れが抜けない」と感じたら。男性更年期と、お酒との付き合い方

2026.11.07
男性更年期と飲酒・生活習慣の見直し

秋の食卓を囲みながら、晩酌を楽しむ時間。仕事を終えた一杯が、気持ちを切り替える習慣になっている方もいらっしゃるでしょう。一方で、「以前より朝がつらい」「休日も何となくだるい」「やる気や性欲が落ちてきた」と感じながら、疲れを忘れるために飲む量が増えてはいないでしょうか。

こうした変化には、睡眠不足やストレス、病気、お薬の影響など、さまざまな背景があります。その一つとして考えたいのが、LOH症候群、すなわち加齢男性性腺機能低下症候群と呼ばれる男性更年期です。今回は、男性の健康を支えるテストステロンと飲酒の関係を手がかりに、日々の晩酌を見直す方法をご提案します。

多量の飲酒は、ホルモンにも影響します

テストステロンは主に精巣でつくられ、性機能だけでなく、筋肉や骨などにも関わるホルモンです。その分泌は、脳からの指令を受けて調整されています。年齢だけで一律に決まるものではなく、体の状態を含めて考える必要があります。

長期間の多量飲酒やアルコール使用障害のある方では、テストステロンの低下や生殖機能への影響が報告されています。背景には、脳と精巣を結ぶホルモン調節への影響、精巣での産生への影響、肝臓の障害など、複数の仕組みが考えられています。

ただし、この知見を「お酒を一口飲めば男性更年期になる」と読み替えることはできません。飲酒量や期間、体の状態によって影響は異なります。また、お酒を減らすだけでテストステロンが必ず正常化する、補充療法が不要になる、とも言い切れません。生活を見直すことと、必要な診察を受けることを、並行して考えていただきたいと思います。

「年のせい」「お酒のせい」で片づけないために

朝からだるい、落ち込みやすくなった、集中力が続かない。そうした不調があっても、「忙しいから仕方ない」と我慢する方は少なくありません。飲んだ翌日に調子が悪ければお酒の影響を考えますが、飲まない日にも続く変化まで、それだけで説明しようとしないことが大切です。

特に、性欲や朝の勃起の変化を伴う、仕事や家庭生活に支障が出ている、気分の落ち込みが長引くといった場合は、早めにご相談ください。問診や必要な血液検査などを通じて、男性更年期を含めた背景を確認します。テストステロン値は測る時刻や体調でも変動するため、検査の受け方や再検査の必要性も医師と相談します。

すでに心療内科や精神科などで治療を受けている方も、服薬を自己判断で中断する必要はありません。現在の治療内容を共有しながら、ホルモンの問題が関わっていないかを確認していきましょう。つらさを一つの原因に決めつけず、必要な治療を組み合わせる視点が大切です。

「少量のお酒は長生きにつながる」は、今も正しいのでしょうか

以前は、飲まない人より少量飲む人の死亡率が低く、大量に飲む人では高くなる「Jカーブ」がよく紹介されました。グラフがアルファベットのJの形になることから、「ほどほどのお酒は健康によい」という理解につながったのです。しかし、飲んでいる人の死亡率が低かったことと、お酒が寿命を延ばしたことは同じではありません。

例えば「飲まない人」に、病気になって飲酒をやめた人が含まれると、比較の出発点が違ってきます。少量飲酒の人と非飲酒の人では、所得、食事、運動、喫煙なども異なり得ます。こうした違いを十分に考慮できているかが、近年改めて問われています。

2023年のJAMA Network Openのメタ解析は、107研究、約484万人をまとめました。元飲酒者を非飲酒者に含める問題などを調整すると、少量飲酒群で全死亡リスクが有意に低いとは確認できませんでした。「少量なら確実に長生きできる」という説明を、そのまま支持する結果ではありません。

2024年には、英国のデータを使い、遺伝的な飲酒傾向を手がかりにした研究が報告されています。通常の観察解析ではJカーブが見られましたが、遺伝情報を用いた解析では、少量飲酒の保護的な効果は支持されませんでした。この方法も一定の仮定に依存し、万能ではありませんが、生活背景の違いや病気になって酒量が変わる影響を減らして考える手段になります。

さらに2026年6月公表のAlcohol Intake and Health Studyは、米国のデータなどから、飲酒に起因する生涯の死亡リスクをモデルで推計しました。少量域でも保護的な効果を示さず、量が増えるほどリスクが上がるという結果です。ただし、これは飲酒に起因する死亡の推計であり、全死亡を追跡した研究や「寿命が何年縮むか」の直接測定とは区別する必要があります。

一方、2025年の米国科学・工学・医学アカデミーの報告では、採用した研究をまとめると、適度な飲酒は生涯非飲酒と比べて全死亡率の低さと関連すると評価されました。研究の選び方、比較相手、調整方法によって結論は一致していません。現時点では、Jカーブを完全に否定したと断言するよりも、「長寿のために飲酒を勧める根拠としては慎重に扱う」が適切でしょう。

フレンチパラドックスは「赤ワインで長寿」の証明ではありません

フレンチパラドックスは、飽和脂肪の摂取が多いとされたフランスで、冠動脈疾患による死亡が比較的少ないという観察から注目された考え方です。1992年の論文などでワインの関与が論じられ、「赤ワインは心臓によい」というイメージが広まりました。

しかし、国や集団の比較だけで、ワインそのものの効果を切り分けることはできません。また、心臓病の死亡が少ないことと、がんや事故なども含めた全体の死亡が少ないことは別です。赤ワインに含まれる成分への期待だけで、アルコールの影響を差し引くこともできません。楽しみとしての一杯と、健康のために飲む一杯は分けて考え、飲まない方が長寿を目指して飲み始めることはおすすめしません。

「何杯」よりも、純アルコール量を見てみましょう

飲酒量を振り返るときは、杯数だけでは実際の量が分かりにくいものです。同じ一缶でも、容量や度数によって体に入るアルコール量は違います。目安になるのが、飲み物に含まれる「純アルコール量」です。

計算は「飲んだ量(mL)×アルコール度数÷100×0.8」で求められます。例えば、度数5%のビール500mLは20g。度数9%の缶チューハイ350mLは約25gです。小さい缶でも、度数が高ければアルコール量が多くなることが分かります。日本酒なら15%・180mLで約22gになります。

これらは量を比較するための例であり、「この量までは安全」という許可証ではありません。健康への影響には個人差があり、病気や薬によっては飲まないほうがよい場合もあります。「糖質ゼロ」「プリン体ゼロ」と書かれていても、アルコール自体がなくなったわけではない点にも目を向けましょう。

今週からできる、飲み方の見直し

まず一週間、お酒の種類、容量、度数と、翌朝の体調をスマートフォンなどに記録してみましょう。缶の表示を写真に撮るだけでも構いません。飲まない日も残すと、ご自身の習慣が見えやすくなります。これはホルモンの状態を判定するものではなく、診察で生活と不調を伝えるための材料です。

飲み始める前にその日の量を決め、次に飲む炭酸水やお茶を用意する、小さい容量や低い度数に替えるなど、続けやすい方法をご提案します。本数が増えて総量が変わらないことや、飲まなかった分を週末にまとめて飲むことには気をつけましょう。水を間に挟んでも、アルコールの影響が帳消しになるわけではありません。

眠るための飲酒も避けたい習慣です。飲酒で眠くなっても、その後の睡眠が乱れることがあります。夜の区切りを読書や音楽の時間に替えるのも一案ですが、眠れない状態が続くなら、飲酒で対処し続けずご相談ください。

減らしにくいときこそ、医療の助けを

「決めた量で止められない」「飲む量が増えている」「家族に心配されても続けてしまう」。こうした変化があれば、意志の強さだけの問題として抱え込まないでください。飲酒そのものについて、医療機関で相談することができます。

特に、多量の飲酒を続けている方で、お酒が切れると手が震える、汗が出る、動悸がする、飲むとそれが治まるという場合は注意が必要です。急に中断することで重い離脱症状が起こることがあるため、自己流で一気にやめようとせず、早めに医療機関へご相談ください。けいれんや意識の異常があれば、救急対応が必要です。

服薬中の方は、お薬と飲酒の組み合わせも確認しましょう。睡眠薬などと一緒に飲むことには危険があります。飲酒量を少なめに申告したり、薬を飲まなかったことにしたりせず、そのままお伝えいただくことが、安全な治療につながります。

男性更年期が気になる方は、ご相談ください

みらいメディカルグループでは、男性更年期が気になる方のご相談をお受けしています。ホルモン補充療法外来へのご相談では、気になる症状に加えて、普段の飲酒量や服薬の状況もお知らせください。お薬手帳、健診結果、簡単な生活のメモがあればご持参ください。受診方法はグループのホームページからご確認いただけます。

ホルモン補充療法は、飲酒による影響を打ち消すための治療ではありません。症状や検査結果、持病などを踏まえ、適応を確認して選びます。生活の見直しだけを頑張り続けることも、薬だけに頼ることもせず、ご自身に合う方法を一緒に考えていきましょう。

晩酌を見直す第一歩は、昨日飲んだお酒の量を確かめることから。「最近、以前と違う」と感じる不調があれば、その感覚も大切な相談のきっかけです。お酒との付き合い方と体調の両方に目を向け、無理なく続けられる健康管理をご提案します。

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