
今年のインフルエンザ対策は、早めに考えておきたい状況です。鼻にスプレーするフルミストと、従来の注射ワクチン。違いを知り、ご家族それぞれに合った方法をご相談ください。
今年は早めの流行。東京都では昨年より1か月以上早く開始
「まだ9月だから」と待たずに、今年は早めに接種の相談をしていただきたい状況です。東京都の8月27日の発表によると、8月17~23日の患者報告数は1定点医療機関当たり1.49人となり、流行開始の目安である1.0人を超えました。昨年は9月22~28日の週にこの目安を超えており、今年は1か月以上早い開始です。
さらに9月17日には、9月7~13日の報告に基づいて、都内で注意報基準に達したと発表されました。こちらも昨年より1か月以上早い到達です。これは東京都の状況で、全国一律に同じ速さで流行しているという意味ではありません。お住まいの地域の情報も確かめながら、冬を待たずに備えていきましょう。
ワクチンに期待できること
インフルエンザワクチンは、発症や重症化の予防に役立ちますが、感染や発症を完全に防ぐものではありません。年齢や健康状態、流行するウイルスとの適合などで効果は変わります。特に高齢の方や基礎疾患のある方は、重症化への備えについても、かかりつけ医にご相談ください。
フルミスト(経鼻弱毒生インフルエンザワクチン)
左右の鼻に少量ずつスプレーするワクチンです。注射針を使わないため、針を刺す痛みがなく、1シーズン1回の接種で完了します。日本では2023年に承認され、2024年度から国内承認ワクチンとして使われています。
病原性を弱めたウイルスを使う「生ワクチン」です。ウイルスの侵入経路となる鼻やのどの粘膜でも免疫反応を起こすことが特徴です。ただし、この仕組みだけで「注射より必ずよく効く」と判断することはできません。
注射ワクチン(不活化インフルエンザHAワクチン)
従来から広く使われている注射のワクチンです。感染性を失わせたウイルスから取り出した成分を使う「不活化ワクチン」で、接種によってインフルエンザを発症することはありません。一般的な製剤は生後6か月から高齢の方まで接種の対象になります。
妊娠中の方や免疫機能が低下している方にも接種を検討できます。ただし、病気や治療内容によって適した時期や期待できる免疫反応が異なるため、「誰でも無条件に受けられる」という意味ではありません。主治医と相談して決めましょう。
比較表
大きな違いは「対象年齢」と「接種回数」です。19歳以上の方はフルミストの対象外で、注射ワクチンを選びます。以下は、一般的な皮下注射の不活化インフルエンザHAワクチンとの比較です。製剤ごとの条件は接種先でご確認ください。
| 項目 | フルミスト(鼻スプレー) | 注射ワクチン |
|---|---|---|
| 接種方法 | 左右の鼻にスプレー | 通常、腕に皮下注射 |
| 対象年齢 | 2歳以上19歳未満(2~18歳) | 生後6か月以上(年齢上限なし) |
| 接種回数 | 1シーズン1回 | 13歳未満は2回、13歳以上は原則1回 |
| ワクチンの種類 | 弱毒生ワクチン | 不活化ワクチン |
| 痛み | 針を刺す痛みなし | 注射の痛みあり |
| 主な副反応 | 鼻水・鼻づまり、のどの痛み、発熱など | 注射部位の赤み・腫れ・痛み、発熱、だるさなど |
| 妊娠中の方 | 接種できません | 医師と相談のうえ接種を検討できます |
| 免疫機能が低下している方 | 明らかな免疫異常・免疫抑制治療中は接種できません | 病状・治療内容を確認して接種を検討できます |
| 費用 | 自費。医療機関によって異なります | 自費または定期接種等。年齢・助成・医療機関で異なります |
フルミストは注射より費用が高い設定の医療機関もありますが、注射を2回受ける場合は合計額で比較しましょう。自治体によっては子どもの接種費用に助成があります。お住まいの区市町村と接種先にご確認ください。
フルミストが向いている方・向いていない方
選択肢になる方
- 注射が苦手な2~18歳のお子さま。
- 13歳未満で、2回の通院が難しい方。
- 受験などを控え、1回の接種で済ませたい対象年齢の学生の方。
年齢が対象でも、持病やお薬によって適さない場合があります。「針を使わない」という利点と、安全に受けられる条件の両方を確認して選びましょう。
接種できない方・対象外の方
- 19歳以上の方、2歳未満のお子さま。
- 妊娠中の方。妊娠の可能性がある場合も必ずお申し出ください。
- 明らかな免疫機能の異常がある方、免疫抑制をきたす治療を受けている方。
- フルミストの成分でアナフィラキシーを起こしたことがある方。
フルミストにはゼラチンが含まれます。ゼラチンで重いアレルギーを起こしたことがある方は、自己判断で接種せず、必ず医師にご相談ください。日本小児科学会はゼラチンアレルギーのある方には不活化ワクチンを推奨しています。
注意が必要な方(医師に必ずお伝えください)
- ぜんそくがある方、最近「ゼーゼー」という呼吸があった方。日本小児科学会は喘息のある方には不活化ワクチンを推奨しています。
- ご家族に、移植後など免疫機能が著しく低下している方がいる場合。
- 卵などでアレルギーを起こしたことがある方。注射ワクチンも確認が必要です。
- アスピリンなどの解熱鎮痛薬を使っている方。
- 鼻づまりが強い方。接種方法や接種日の変更を検討することがあります。
- 授乳中の方、妊娠を予定している方。
「ステロイドを使っている」という場合も、飲み薬・注射・吸入・塗り薬など、使い方で判断が異なります。お薬を自己判断で中止せず、お薬手帳を見せてご相談ください。妊娠可能な方には、フルミストの添付文書に基づき接種前後の避妊についても確認・説明を行います。
接種前・接種後の注意点
接種前
- 明らかな発熱(通常37.5℃以上)や重い急性の病気があるときは接種できません。その他の体調不良も来院前にご相談ください。
- 抗インフルエンザ薬を使用中、または最近使用した方はお伝えください。フルミストの効果が弱まるおそれがあります。
- 最近受けたワクチンと接種日もお知らせください。経鼻のフルミストには、注射の生ワクチン同士に適用される「27日以上」の一律の間隔規定はありません。体調や製剤の条件を確認します。
- お子さまは母子健康手帳をご持参ください。保護者の同伴・署名など、必要な手続きを予約時にご確認ください。
接種後
- 接種後30分程度は、医療機関の指示に従い、すぐに対応を受けられる場所で様子を見てください。
- フルミストの後は、鼻水・鼻づまりなどが出ることがあります。ただし、接種後の症状をすべて副反応と決めつけないようにしましょう。
- フルミスト接種後1~2週間は、免疫機能が著しく低下している方との密接な接触を可能な限り避けてください。ワクチンウイルスは4週間以内に残存している可能性もあり、2週間で必ず排出が終わるという意味ではありません。
- 接種当日は激しい運動を避け、注射部位を強くこすらないでください。体調がよければ入浴は通常可能ですが、接種先の指示に従いましょう。
- 高熱など気になる症状は速やかにご相談ください。息苦しさ、意識の異常、けいれんなどがある場合は、連絡を待たず救急受診・救急要請をご検討ください。
一般に、ワクチンによる防御に役立つ抗体ができるまで約2週間かかります。今年はすでに流行が始まっている地域があるため、「10~11月まで待つ」と決めず、接種可能な時期を早めにご相談ください。
よくあるご質問
Q. 大人もフルミストを受けられますか?
国内での対象は2歳以上19歳未満です。18歳の方は対象ですが、19歳以上の方は注射ワクチンをお選びください。
Q. フルミストと注射、どちらがよく効きますか?
日本小児科学会は、両者のインフルエンザ発症予防効果について明確な優位性は確認されていないとしています。どちらも感染や発症を完全に防ぐものではありません。年齢、持病、お薬、ご家族の状況を確認したうえで、痛みや通院回数のご希望も伺ってご提案します。
Q. 両方受けたほうが効果は高いですか?
通常はどちらか一方を選び、そのワクチンで必要な回数を受けます。両方を重ねれば効果が高くなるとはいえません。すでに今季の接種を受けた方は、接種日と製剤名をお伝えください。
Q. 接種後に鼻水が出たら、インフルエンザにかかったのですか?
フルミストの副反応として鼻水が出ることはありますが、それだけで原因は決められません。自然感染の可能性もあります。高熱が続くなど心配な場合はご相談ください。接種後はワクチン由来のウイルスで迅速検査が陽性になる場合もあるため、受診時にはフルミストの接種日をお伝えください。
Q. 他のワクチンと同時に接種できますか?
医師が必要と認めた場合は同時接種が可能です。接種予定や履歴を、予診時にお知らせください。
最後に
「痛くないから」だけで決めず、問診で安全性を確認したうえで選びましょう。みらいメディカルグループでは、予防接種についてのご相談を承っています。対応する製剤、対象年齢、費用、予約方法は各院で異なります。公式ホームページの「予防接種・ワクチン」と、ご希望のクリニックの最新のお知らせをご確認ください。
ご不明な点は、ご予約時または来院時に、スタッフ・医師へお気軽にお尋ねください。ご家族それぞれに合った方法で、今年のインフルエンザに備えていきましょう。
